つばさ静岡が開設して8年が経過しました。開設当時、2歳で入所したI君も早や10歳、入所者全体の平均年齢も30歳を超えました。昨今の行事の中にも、「ゾーンでの飲み会」、「ビアガーデンに出かける」などの活動が多々みられるようになっており、「もう皆さん子どもではないんだな」ということが実感されます。この過ぎ去った8年という時間が利用者の方々に本当に有意義であっただろうか、ということを反省しつつ、またこれからの時間を大切に過ごしていきたいと思います。
話は変わりますが、私たちは日々何のために仕事をしているのでしょうか。「仕事が楽しいから」、「自己実現のため」、「人生を充実させるため」、「社会貢献として」、「生活費をかせぐため」など、その動機や考え方は人それぞれでしょう。
重症児者介護の仕事の中心は日々の生活の支援です。朝起きて離床し、顔を洗い、更衣をして、朝食を食べ・・・と普段私たちが何気なく当たり前に行っている日常生活を支援し、その基盤の上に音楽鑑賞や読書、散歩や買い物などのさまざまな活動が行われます。では、この仕事の最終的な目標はどこにあるのでしょうか。
例えば、入浴の介助はその方の体をきれいにすることが第一義です。ぴかぴかに体を洗うことは何より大切です。しかし入浴の最終目標はそこにはありません。その先にある、その方が「あ~さっぱりした」と心地よくなることや、「やっぱりお風呂は気持ちいいや」と笑顔になることにあるはずです。食事介助の場合は食べる楽しみも然ることながら、食べた後の満腹感や、「あ~おいしかった」という満足感にまでその思いが至らければならないでしょう。決して「提供された食事を胃の中に流し込めば仕事が完結」というものではないはずです。
どんな仕事であってもその本質は変わりません。製造業に携わる人が物を作ることのみにその仕事の主眼を置いていたら、また小売業の人が商品を売った収益のみによろこびを感じていたとしたら、その仕事は無味乾燥したものになってしまうのではないでしょうか。商品を買った人が、「ちょっと高かったけど、これ買ってよかった」と喜ぶ姿、製品を使った人が「こういうのが欲しかったんだ」と笑顔になることにこそ、その仕事の本来の意味があるのです。
そう考えていくと、私たちは人の笑顔のために働いているのだと言えます。目の前にある仕事をこなすこと、与えられた課題を丁寧に仕上げることは大切ですが、その先にある人としての喜び、つまり人々の笑顔に思いを馳せることができなければ、仕事はいつしか楽しくないものになってしまうでしょう。介護の仕事には何よりもその想像力が必要です。笑顔が目標だとすれば、介護の仕事はその成果が最も見えやすい職業だといえるでしょう。